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大阪簡易裁判所 昭和43年(ろ)1570号 判決 1968年10月18日

被告人 藤田兼敏

主文

被告人を罰金三、〇〇〇円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和四三年七月二八日午後二時五〇分ごろ、大阪市北区梅田町無番地国鉄大阪駅西口ガード下において普通乗用自動車(大阪五や五一-八七)を駐車するに際し、その左側端に沿つて駐車しなかつたものである。

(証拠の標目)<省略>

(法令の適用)

被告人の判示所為は道路交通法第四八条第一項、第一二〇条第一項第五号に該当するので、その所定金額の範囲内で被告人を罰金三、〇〇〇円に処し、右罰金を完納することができないときは刑法第一八条により金五〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置することとする。

(判決で公訴を棄却しない理由)

一、駐車方法の違反は、昭和四二年法律第一二六号道路交通法の一部を改正する法律によりまず交通反則通告制度による手続によつて処理されるべきものとなつた。

その手続の過程において、告知もしくは通告不能又は反則金納付期間の徒過等所定の要件が具備することにより始めて刑事訴追をすべきものである。しかるに本件の場合は右手続を経ることなく直ちに公訴が提起された。それ故本件公訴提起は刑事訴訟法第三三八条第四号に該当し、無効ではないかとの疑いを生ずる。

二、しかしながら前掲各証拠によると、被告人は本件違反の当時、過失によつて無免許運転をしたことが認められる。

ところで、道路交通法第一二五条第二項第一号の規定によると「当該反則行為に係る車両等に関し、法令の規定による運転の免許を受けていない者」を反則者の範囲から除外している。

この場合、「法令の規定による運転免許を受けていない者」とは、故意、過失の有無という行為者の主観的な状態を問わず一般的に免許を受けていない者という行為者主体の客観的な状態について規定しているものと解すべきであるから、本件被告人は反則者の範疇に属しないことは明らかである。

もつとも、同法第六四条は無免許運転に関し、故意ある者のみを処罰し、過失による者を処罰していない。

右規定は免許を受けないで運転をしたという当該具体的行為について故意過失の有無を区別し、法的価値判断の対象とするか否かに関するものであるから、被告人が本件違反当時無免許運転をしたことに過失があつたとしても本件被告人が反則者に該当しないとする前段の解釈に影響を与え又は相互の解釈が抵触するものではない。

三、しかして反則行為に関する処理手続の特例により得るのは、反則者による反則行為に限定されるものであるところ、本件被告人は反則者としての要件を欠くこと前述したとおりであるから、右手続を経由することなく直ちに本件公訴を提起するも、その手続は法令に違反するものとはいえない。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 佐加英彦)

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